INTERVIEW

数字で測れないことこそ大事。
ネガティブな理由ではなく、ポジティブな理由から、
公共物を造りたい。

加藤真啓さん加藤真啓さん
1983年生:30歳
大学の建築学科を卒業後、住宅建材のメーカーに始まり
ハウスメーカー・アトリエ系の設計事務所を経て、2012年に独立。現在「Slow Journey」を主宰する。
キッチン・住宅・店舗の設計ほか、雑誌の企画など建築の幅広い分野に関わる機会を経験する。
現在は設計のほか、リフォームや家具デザイン・ファッションアイテム等手がけ、人の気持ちに寄り添った建築を目指す。2012年2月、二級建築士取得。
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将来的に、何かしら自分でやりたいなという思いはありました。

Q.学生時代から建築を学ばれていたのですか?

そうですね、大学は建築学科でした。入学のきっかけで東京に出てきました。
入る時は建築をやろうと思っていたんですが、大学で始めて分かったことには・・・頑固な人が多くて。(笑)自分以外認めない、という狭さに疑問を持ち、建築が嫌になってしまった時期もありました。ただ住宅のキッチンの設計には興味があったので、初めに入った会社で、キッチンの設計などやっていましたね。将来的に何かしら自分でやりたいなという思いはありました。当時は建築と決まっていたわけではないのですが、本当にやりたいことへ繋がることを、と考えてはいましたね。

Q.入社から独立までの経緯は?

24、25歳くらいの時にやはり建築をやっていこうと思い直し、その後建築事務所へ入りました。そこはハウスメーカー寄りで、住宅の設計を中心にやっていたのですが、仕事をこなすうちにもっと建築そのものを本格的にやりたいなという感じになってきて。そして、設計事務所へ入りました。そこでは、住宅に限らず店舗の設計、コンペ、雑誌の企画など建築の幅広い分野に関わる機会を与えて頂きましたね。1年少しお世話になり、そして独立という経緯です。たまたま知り合いで一緒にやろうと声をかけてくれた人がいたんです。そこから更に、1人でやることになりました。
今は打ち合わせや見積もりから、じっくりお客様に向き合えるというところはありますね。CADと同時に、なるべく手書きやアナログな感覚も大事にと思っています。図面より、模型などでバーンと見せた方がお客様もイメージを掴みやすかったりするので、良し悪しを考えて敢えてプレゼンにCADを使わないこともあるんです。

Q.ハウスメーカーや住宅を中心に選ばれた理由はありますか?

一番最初は、公園を造りたいと思ったことがきっかけです。
大きなものではなく、街中にあるような公共物としての公園に興味があったんです。高校の先生に相談し、土木系にいくのか建築系にいくのかというところで、建築を選びました。仕事をしていく中で、公園を造りたいというところから、人の住まいをやりたいという気持ちへ移ってきました。明確にこれといった理由があったわけではないのですが、よく僕が思うのは、店舗の設計等はどんなにデザインが良くても、売上が良くなければ、駄目なデザイン。数字で評価されてしまうところがあります。しかし住宅というのは、利益どうこうの話ではなく、住む人の気持ちや満足度というものが評価になる。それが一番の決め手だったかもしれないですね。
数字で評価が決まるのではなく人の気持ちで勝負できる、心の満足というところでの分野なんです。今も住宅は面白いしやりたいと思いながら取り組んでいます。

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ご家族の中に1人でも「残したい」という人がいるなら―
そう考えて残した、門かぶりの木の設計。

Q.住宅の設計で心に残っているものはありますか?

そうですね、地元の繋がりで、駐車場の屋根と門回りの設計の依頼がありました。まず、駐車場の屋根は優先順位が低いところで、なかなかこだわって作りたいということが少ない、案件としても珍しいものでした。門というのも特別なもの。住む人にとって思い入れのあるものなんですよね。古い家だったので、娘さんが「門かぶり(※)の木をどうしても残したい」と仰り、ご両親は「屋根のデザインとの兼ね合いが難しいのでは」という反対意見でした。でも、ご家族の中に1人でも「残したい」という人がいるなら残そう・・・そういった考えで取り組み、結果的に満足してもらえました。それこそ、数字では負えないところの気持ちの反応を感じられましたし、自分でも上手くいったという感触がありましたね。設計前はやや暗い雰囲気のところだったのが、家の全体の雰囲気に関わる門が生まれ変わったことで、「家自体がすごくいい雰囲気になった」という声がいただけた時は、嬉しかったですね。

(※)門かぶり … 庭木などが門にかぶっている状態のこと

Q.1つの案件にどのくらいの期間がかかるものでしょうか?

駐車場の屋根と門の案件では、工事は1ヵ月だったんですが、打ち合わせに5ヵ月かかりましたね。住宅ですと、一般的に言われているのが、打ち合わせに半年、工事に半年。1年くらいになってしまいますね。

Q.苦しいことはどういうことでしょうか?

苦しいことはしょっちゅうですよ(笑)!金額も大きいですし、関わる人も多いので、段取りも要望も、正確に伝えていかないといけない。デザインどうこうよりも、調整をしていかなければいけないところに苦しさがあるかもしれません・・・。
また違う場面では、お客様の要望に対して、設備や金額が折り合わずどうしても叶えられない時、それを言わなければいけない時は辛いなあと感じますね。実際の寸法に落としこむことや、金額もありますし、なんでもかんでも出来ないという葛藤があります。とはいえ、「あれやりたい、これやりたい」というお客様の方が話していて楽しいところはありますね。「そう来たか!」と思ったりすると、楽しいです(笑)。

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制限がない建築は意外と難しい。
縛りがあるからこそ、生まれる世界かもしれません。

Q.CADはいつ学ばれたのですか?

AutoCADはキッチンの設計に必要だったので、最初の会社の研修に組み込まれていたんです。でないと、使いこなせなかったと思います。その後進んだハウスメーカーと建築事務所ではVectorworksでした。独立後も、その流れで使っていますね。そこまでソフトに違いはないと思うのですが、建築はVectorworksが使いやすいみたいです。働き方は色々あると思うのですが、働く環境でCADが研修に入っていたのは良かったかもしれません。

Q.独立して立ち上げた「Slow Journey」では、どのような仕事を?

一番多いのはリフォームです。後は、お箸や地方の伝統工芸品の製作など、幅広く。選べる立場でも無いので、来た仕事をありがたくやらせていただいていますが、やはり住宅関連が多いです。家は、構造や法律やその町の条例など色々な縛りの中でやるのですが、制限がない建築は以外と難しい。法規的に決まっているからこそ、出てくるものがあるのかもしれません。真っ白いところに、何をどう作っていくのか、どこに終着点を設けるのか。ある意味では、そういう縛りがあった方が、やりやすいのかもしれないですね。

Q.今一番造りたい物とは?

公園の話に戻りますが、公共物でしょうか。公園、図書館、バス停とか。実家が田舎だからかもしれないんですけど(笑)、お金をかけない場所・・・ふと置いてあるバス停のベンチなど、設計してみたいんです。例えばベンチって、中心に肘掛が付いているデザインのものがあると思うのですが、あれはホームレスが寝ないように、というネガティブな理由や流れから発想されたものなんです。僕は違う側面、ポジティブな側面から造ってみたいんです。「あれをしないように」というマイナスではなく、「これが出来るように」「人がくつろげるように」というような理由から・・・。それを今も思って、仕事をしています。
あまり大きなことは言えないんですが、ゆくゆくは建築を目指す若い世代にとって、何らかの助けになればいいなと、そんな思いはありますね。苦しいこともありますが、基本的には好きなことを仕事にするのはのやっぱり楽しい!色々な出会いに本当に感謝しています。

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好きな建築物は?

東大教授の建築家、藤森照信さんの「高過庵」ですね。木の上に出来た和風の茶室のような、ツリーハウスのような建築です。
そこに行ったときは、こんな風に自由な建築はいいなと思いましたね!

趣味は何ですか?

フットサルと生花です。昔はサッカー少年でした。今はフットサルのチームで汗を流しています。生花も、もうトータルで8年ほど続けています。もうそろそろ師範免許をとれるので、建築やインテリアに活かし、仕事に絡めていきたいですね。

1日のタイムスケジュール

決まってこれ、というのはないですが
朝8時頃現場に行き、職人さんと打ち合わせをして、戻って修正箇所の作業など。
基本的には、10時〜19時を自分の中で定時にしています。遅い日は終電まで等、案件によりけりです。

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INTERVIEWER'S_EYES

CADは、新卒で入った会社の研修に組み込まれていたと仰る加藤さん。環境を上手く利用し、確かなキャリアを積みつつも、ぶれない意志を軸にステップアップされてきた姿勢は、ナチュラルでありながら個性的。
「数値で測れないものを大切にしたい」。図面や数字という世界にあってなお、真っ直ぐな眼差しでそう言い切る姿が印象的でした。

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