知っていることより、知らないことを。
こなす仕事ではなく、吸収する仕事を。
またカナダに戻って、建築にたずさわるのが、次の目標です。
神奈川県在住。高校卒業後、建築の専門学校へ。
卒業後は、デザイン関係の道へと進み、
デザイナーアシスタントとして従事。
途中、カナダ留学を経験。地元の企業にて、
かねてから興味のあったファッション関連の仕事でも、
設計の経験と持ち前の好奇心を活かし、活躍する。
帰国後、現在は株式会社APEXに登録し、
大手の設計事務所にて都市計画プロジェクトに関わる。
使用ソフト:Vector works / SketchUp
ゴシック建築のある、カナダのモントリオールを目指しました。
今のお仕事へ至る道筋を教えてください。
高校は、県立の普通の学校だったのですが、叔父が一級建築士だったので、小さい時からなんとなく、建築っていいなあと思っていました。ただ、実際にその道に進むとは全く思っていませんでした。どちらかと言うと、ネイルなど、ファッション的なものに興味がありました。ただ、親の勧めもあり、資格も取ろうというところで、建築の専門学校へ入ったんです。あの頃が、人生で一番勉強をした時期だと思います(笑)。そこでは、CADだけではなく、1から10まで完成させなければいけない大変さなども学べましたし、広いホールでのプレゼンなどの機会もあって、すごくいい経験になりましたね。ただ、だんだん最初の意向とは変わって、デザイン系に興味が出ていきました。それで、デザイナーのアシスタントとして、進むことになりました。一番初めに入った会社は、2、3ヶ月で倒産してしまったんですが、次にウインドウディスプレイのデザインをする会社に入りました。そこでアシスタントを1年くらいしましたね。ケーキ屋さんなどの店舗が多いんですが、季節ごとにウインドウのディスプレイを変えていくという仕事です。桜の季節や、クリスマスやバレンタインなど、イベントごとに・・・。実際にケーキのサンプルを作ったりですとか、木の装飾を製作して設置したりですとか・・・そういった仕事からでしたね。
空間装飾的なお仕事ですね。体力も必要そうです!
そうですね。実は1年くらいした後に、精神的にも肉体的にも仕事がハード過ぎて、実際に倒れてしまいました。一ヶ月くらい入院をしたんです・・・。その時、色々なことを考えたんです。元々、建築ではゴシックデザインが大好きなのですが、学生時代に、2週間ほどスペインやフランスで建物を見る機会があって。それを思い出しましたね。また海外の建物を見たり、留学したいと思うようになりました。そのために、次は派遣に登録し、1年ほど、電気系の竣工図を描く会社でお仕事をさせていただきました。そこでお金を貯めて、1年後にカナダへ留学したんです。初めの留学は23歳の時で、1年ちょっと向こうにいました。ビサが切れてしまったのと、体調のことがあって、戻って来ることとなりましたが、向こうでやっていた仕事は辞めていなかったのと、もう一度行きたいなという気持ちが強くて・・・また1年ほど派遣で設計のお仕事をして、お金を貯めて、また1年半海外へ・・・という生活を送りましたね。実は、最近海外から帰ってきたばかりなんです。4ヶ月前まで、カナダにいましたね。
約1年ごとに移動されていますね。カナダ留学にまつわるお話は?
英語もフレンチもスペイン語も喋れなかったので、まずエージェントに行って、「来月から行きたい」という話をしたら、最初に「無謀過ぎる」と言われてしまいました(笑)。元々は、大好きなゴシック建築のある、カナダのモントリオールを目指して行ったのですが、そこは、旧市街で元々植民地という土地。フレンチが話せないと無謀ということで・・・まず、バンクーバーに行き、1か月だけ語学学校に行きましたね。ぎりぎりの予算で行ったので、その後はすぐに就活をしました。英語が喋れないままに、自分のデザインや建築をポートフォリオにして持って行き、会社を20社くらい回ったんですが、全く喋れなかったので(笑)、面白いなと思ってくれた方はいたのですが、働くところまで行けなかったんです。それで結局は、日本食レストランで働くことに落ち着きました。そこで結構語学力がついたかもしれません。その後、知り合った方のつてを辿り、インテリアデザインの会社で働くことに決まりました。
CADソフトだけでなく、デザイン寄りのソフトも勉強中です。
今でまで作ったものの中で印象的なものは何ですか?
もう7、8年ほど前になりますが、学校の卒業製作で作った、結婚式場のデザインですね。敷地は実際に空いている場所を調べて・・・というところから始まり、構造から積算、デザイン、コンセプトも考えましたね。実際の模型を作って、それを写真にして。もちろん実際に建つものではなかったんですが、自分で考えたものを形にするってとても大変だと感じましたし、やり甲斐がありましたね。お仕事でも、完成の一部にたずさわることは出来るんですが、プランニングから意見を聞いていただけることって実際は少ないので、いい経験になりました。他に印象深いのは・・・ある会社で、地方ホームセンターのピクトグラムのデザインを任せていただけたことがあったのですが、偶然、それが祖母が住んでいる近くの場所だったんです。完成後、祖母と一緒に見る機会があり、嬉しかったですね。建築やデザインは、想像だけではなくて、目に見えて形になる。そこがすごく面白い仕事だなあと思いましたね。
最近のお仕事を教えてください。
今、カナダにいた頃のお仕事も継続しています。ファッションショーをやる会社の団体なのですが、ショーに使う小さいプロダクトや、舞台設計の一部などをやらせていただくことがありますね。去年の9月は、まだカナダにいたのですが、現地のファッションショーで取り入れていただくことが出来てとても嬉しかったです。正直、思っていたよりは規模の小さいものではあったのですが・・・ずっとやって来た建築の要素を、大好きなファッション系のお仕事と結び付かせることが出来て嬉しかったですね。働き方としては、以前は、正社員で働いた方が、親孝行になるんだろうな、ボーナスもあるし・・・などと思っていたんですが、実際に自分が色々なお仕事を経てみると、1つずつ収穫を得ながら違うことをする、というのはとてもいいなと感じています。派遣は、使い方によっては沢山メリットがありますよね。
CADも進化していると思いますが、新しく何かを取り入れたりされますか?
知らないことを知っていくことに興味があるので、仕事中でも、時間があれば、新しいソフトなどを教えていただいていますね。今のお仕事も、まだ1か月半なのですが、デザイン系の新しいソフトを2、3個覚えることが出来ました。新しい環境や、知らない方法、そういったものに触れていくことに興味があります。InDesignやPhotoshopなど、デザイン寄りのソフトも段々使えるようになってきました。CADソフトでは、VectorワークスなどのCADのソフト以外でも、SketchUpというソフトを覚えました。実は、カナダで就活をした時に、面接でよく「SketchUpは使えるか」と聞かれたんですね。それまで聞いたことのないソフトだったのですが、今いる会社は偶然海外の方が多く、教えてくださる方がいました。いつかまたカナダに戻る時に使えたら本当に嬉しいです。今までの派遣では、ひたすら図面を描く、という内容のお仕事が多かったんですが、今は1つの大きなプロジェクトの専任で入らせていただいたので、企画や計画という内容。データをまとめてプレゼン資料の作成を作ったり、模型を作ったりなどしていますね。部署としては都市計画部というところです。かなり大きいプロジェクトで・・・「何ヘクタール」というような言葉が飛び交っていますね(笑)。
自分からは絶対出てこないものに、興味がありますね
派遣のメリット・デメリットは何でしょうか?
そうですね・・・条件が選べるというか、私の場合は、派遣の方が自分のステータスとして合っているかなと思っているんですね。アペックスさんからご紹介いただいた今のお仕事も、元々希望のお仕事もご提示してもらえたんですが、それ以上に魅力的だと思えるお仕事を紹介してもらったんです。それが今いる、大きな会社の都市計画のお仕事なんですが、プロジェクトの内容が面白そうだなと思ったんです。それから、しっかり選べば、残業量も多くありません。今は、家庭の事情があり、家のことをやるためにカナダ行きを延期して日本に残ることにしたので、そういった条件を満たすことが出来る仕事に出会えたのは良かったですね。デメリットがあるとしたら・・・私は今までそういったことはなかったんですが、期間が決まっている場合などは、契約ぴったりで終了になってしまうなどのお話は、たまに聞きますね。
調べ物に使うツールは?
やはり携帯で調べることが多いですが、例えば検索って、自分の言葉しか出てこないと思うんですね。もっと違ったもの、例えば、友達の発言とか・・・そういうものも大切にしたいと思っていますね。自分の知らない言葉とか。自分からは絶対出てこないものに、興味がありますね。知っていることには興味がないというか・・・知らないことを知っていきたいという気持ちがあるんです。
最後に、お仕事のモットーやこだわりを教えてください。
そうですね・・・こなす仕事ではなく、吸収する仕事がしたいと思っていますね。あとは、出来ることはしない。なるべく違うやり方を探してみたり、早く出来る方法を知ってみても、別の方法に変えてみたり・・・。もちろん、時間がない時は仕方ないんですが、それは結構心がけていますね。CADのソフトにしても、開くと絶対知らないツールが出てきますし、検索1つにしても、知らないことを辿って行くと、リンクがどんどんつながって、色々と知ることが出来ますよね。多分それが好きなんだと思います。じっとしていられない性格なので、例えば専業主婦にはなれないと思いますが(笑)・・・今後も、色々なことを吸収しながらお仕事をして行きたいです!
好きな建物や建築物は?
スペインで見た「カサミラ」というガウディの建築です。アーティストのためのアパートなんですが、吹き抜けで、曲線だらけの不思議な建物なんですが、中の導線がしっかりしていて感動しました。それから、フランスにある「ダビタシオン」。これもアパートメントなんですが、構造が変わっているんです。黄金比で出来ていて、とても広いんですが、田舎にあり、日本にすると家賃は約6万円だそうです(笑)!
趣味や息抜きは何ですか?
Facebookなどで、世界中にいる友達の近況を知ることが出来るのがすごく楽しいですね。韓国人の親友の女の子がいるんですが、毎日のように連絡を取り合っています!
最後にひとこと
目標は常に変わっているんですが、今はまたカナダに戻りたいですね。ゴシック建築をする目標が少し変わりつつあり、更にその先というか・・・常に新しい物を見られる場所で働きたいと思っています。プランとして描けたものにはそんなに興味がなくて。常に新しいものを探して行きたいんです。
ご自身のライフスタイルや考え方と、目の前のお仕事。それを常に重ね合わせ、誠実に、貪欲に日々を過ごされる菱崎さんのお話は、とても刺激的でした。人生で大切なことを教えていただいた気がします。日本ではもちろん、海外でも、今後益々のご活躍をお祈りいたします。