INTERVIEW

女性の採用が厳しい電気通信業。
苦しいというより「悔しい」と感じる事はありました。
ご縁と面白さで、今があります。

森口千春さん森口千春さん:40歳。福岡県出身。
高専制御情報工学科卒業。
女性の採用は厳しいと言われていた技術系を志望する。
警備保障会社で機器の設置図作成を担当後、
キャリアアップのため、土木コンサルタント会社へ転職。
その後、派遣にてCADオペレーターとして福岡県の防災無線の仕事へ。
電気通信工事の施工管理を経験後、3年前にフリーランスとなる。

使用CAD:AutoCAD,3DCAD
CADの経験年数:約19年
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作図だけではなく、アクティブに現場の監督をすることも。

Q.電気通信業に関わるCADとはどのようなものですか?

一見分かりにくい、堅苦しい分野に見えがちかと思うんですが、生活や公共にかかわる工事が多いんです。電気通信業と言っても色々な分野がありますが、携帯基地局の建設に関する図面や、ダムなどの設備管理の設計図でしたり、ネットワーク関係など・・・。仕事内容としては、工事の設計が多いですね。CADによるトレース、作図、書類作成などです。ゼロからではなくて、その一部に携わる感じですね。設計のための図面を引いたり、工事の現場でケーブルがどれくらい必要とか、そういった数量を拾い出したりもしますし、実際に現場を監督したりもします。派遣で、火山の監視カメラの工事の設計をしていたこともありました。

Q.火山の監視カメラ!スケールの大きな世界ですね。

そうですね、大きなプロジェクトというのはありましたね。
火山の監視カメラのお仕事は、CADの図面プラス現場の責任者ということで、工事の管理もしていました。自然の中にポールを立ててカメラを設置したり、建物を借りてその屋上にカメラを設置したりという内容なんですが、図面を書くことと、現場と・・・結構アクティブかもしれません(笑)。
作図や設計にかかわる書類を作るといったことが多いのですが、仕事によっては現場も経験させていただきました。火山の現場については、北は北海道から南は鹿児島の離島まで、飛び回りましたね。工事の期間は1年~2年単位なんですが、現場ごとにすると数日間から長ければ1か月以上・・・例えば北海道だと2ヶ月そのまま行きっぱなしでしたね。その間はホテル暮らしなんです(笑)。

Q.いつ頃からこのお仕事を志していたのですか?

漠然と、ですね・・・。小さい頃から物を作ることは好きでしたが、本当に漠然としていました。
母親が洋服を作っていたり、父親が技術者だったりと、なんとなくですが、育った環境にきっかけはあったのかもしれません。それが、学生時代に高専(高専制御情報工学科)に入ったあたりから、手に職を付けたいなという考えが出てきて。技術系やものづくりの世界に、憧れは抱いていましたね。

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「女子お断り」の業界。
諦めかけていた頃、面接官の一言がきっかけでこの世界へ。

Q.学生時代はどのような環境でしたか?

高専は、高校と大学の1、2年が一緒のような感じなのですが、校則も無いに等しく、ゆるいようなところもあって(笑)。情報という学科名だったのですが、ほとんど機械系の内容でしたね。そこでCAD製図の科目がありました。この時からAutoCADでしたが、当時はWindowsもなく・・・カラーだったかもあやしいですね。今とはだいぶ違います。
環境としては、技術系はやはり男性が多いので、学校も女子の割合は全体の1割。かなり珍しい環境ですよね。一緒には出来ないのですが、工業高校と似ているかもしれないですね。
就職に関しては、学校推薦というのがあるんですが、私たちの2年くらい前の先輩たちまではほとんど大手に行っていました。ただ私の年は、新卒での就職活動時期はバブルが弾けた時期。「女子お断り」というような厳しい雰囲気があったんです。
先生がまず会社の担当の方に問い合わせをしてくれるんですが、女子というと、もう門前払いのような感じだったんですよ。女子なら、要らない。そういった世界でした。

Q.厳しい条件の中、岐路はありましたか?

たまたま近所の友人が、空港警備のお仕事をしていたんです。空港で、登場口の検査等がありますよね。ああいったものも空港警備のお仕事です。当時の私は、住んでいたのが田舎町というのもあって(笑)、外に出たいなという気持ちが強かった。学んできたことと関係はなかったのですが、友人から募集があるという話を聞いて「面白そうだから行ってみよう!」と思ったんですよね。ちょうど、女子の採用は厳しいのかと諦めかけていた頃でした。それで、警備保障会社の面接を受けました。成績を提出するんですが、図学というのがあって、CADの履修科目を学んでいたこともあり、面接官から「機械警備施工図を作成する担当にならないか」と言われたんです。その一言がなければ、今はないですよね。

Q.どのように電気通信業へ?

その警備保障会社には1年位務めました。機器の設置図作成が担当でしたが、事務的なことの方が多くて。もっと積極的に動きたいなという気持ちがあり、キャリアアップも兼ねて土木
コンサルタント会社に転職しました。その後、学生時代にお世話になった方に誘われて、
まだ20代前半の頃に美術ギャラリーのお仕事もしましたね。技術系とは全く関係のない業種で、2年ほどの寄り道でした(笑)。若かったこともあって、面白そうだったら飛び込んでいく!という感じでしたね。その後、土木コンサル時代の先輩の紹介があって、地元の福岡県の防災無線工事の会社で、2年間派遣として働くことになりました。今もそうですが、周りの方の声がけやお誘いに本当に助けられてきましたね(笑)。ほとんどのことがそれで繋がってきていると思います。その防災無線のお仕事が、電気通信業の入り口でしたね。

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私にしかない強みを活かしたいと、常に思っていますね。

Q.フリーランスのお仕事について教えてください。

今から6年前になりますが、東京に来ました。派遣が終了した後、東京の職業訓練校で半年間3DCADを学びました。扱ったことがなかったので、どんな感じかなと興味がありましたね。その頃個人的に福岡の繋がりでお仕事は受けていたので、在宅でやってみようと思ったんです。それが2011年頃なので、フリーとしては今3年目になりますね。仕事のスタイルとしては幅が広がったかもしれません。今はコンビニなんかでもプリンターで打ち出しができますし、島なんかでもネット環境があるので、図面と書類に関しては、パソコンとネット環境があればどこでも作業が出来る。旅行先や外出先等、自宅以外でも仕事が出来ますね。火山の仕事の繋がりで、現場のお手伝いもたまにありますが、作業服を来てやっていますよ。
業界的に、年度末は忙しいというのはありますね。フリーになって、12月~3月くらいになると、一人って大変だなと感じることも・・・仕事がどうしても重なる時期なので。図面仕事は基本一人で、自宅で仕事をしていますが、なるべく不規則にならないようにとは思っています。仕事のボリュームによって生活スタイルも変えていますが、そこがフリーランスの良さかなとは思います。逆に、会社員で働くメリットもあると思います。オフィスは緊張感もありますし、仕事がしやすい気分になる環境だなと思いますね。自宅は誘惑もありますよね(笑)。

Q.今まで、印象的だったお仕事は?

フリーランスの前にさかのぼりますが、2年かかわった防災無線のプロジェクトのお仕事終了後、そこの関連会社の方が、「うちに来ないか」と誘ってくださったんです。それでまた、ご縁をいただいて飛び付いたのですが(笑)、誘ってくださった方は「女性だから」ということ一切なしに、本当に色々な現場に出させてくださったんですよね。それがなければ現場を知らなかったと思います。図面を書くには、現場を知っていた方が絶対にいいなというのが今の実感です。いろいろなものを見た上で、図面に落としこむ、というのが、やはり理解も深まりますし・・・。
それが自分の強みなのかなとは思っています。

Q.お仕事をする上で、苦しいことは何ですか?

苦しいことというか、悔しいことはありますね。なんで現場に女の人が来ているんだ、と思われたり、まだまだ男性社会だなと思うところは正直ありますね。
ただ、苦しいことは・・・仕事は苦しいものだと思っているので、そんなに感じたことはないですね。言ってしまえば図面書きは、ある程度を学べば、誰にでも出来る仕事だと思っています。だからこそ、そこで人と違った何かを、と常に思ってはいますね。私にしかない強みというのを活かしたいな、活かせているかな・・・ということをいつも思っています。それが次に繋がると思っています。作図は本当に楽しいので、まだまだ、興味が惹かれるままに、お仕事をしていきたいと思っています!

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息抜きや趣味は何ですか?

あちこち出掛けるのが好きですね。映画がすごく好きで、映画館もよく行きますし、自宅でDVD鑑賞もします。後は食べ歩き、飲み歩きですね。(笑)

仕事の情報のソースは?

今はやはりインターネットで殆ど済んでしまいますね。もちろん、実際に見たり聞いたりというのは大事なのですが、100%正しいかどうかは別としても、インターネットはいつも活用しています。

最後にひとこと

どの仕事もそうだと思うんですが、やはり人とのご縁、繋がりが大事だなと思っています。仕事をしていても、こちらが一生懸命お客様のご要望にお応えするように頑張れば、お客様とどんどんいい関係を築ける。機械や技術の仕事でも、大切なのは人の繋がりだと思っています。

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INTERVIEWER'S_EYES

 

学生時代から学んで来たCADのキャリアと、現場での経験値。細やかな作業と、アクティブなフィールドワーク。そのバランス感覚は、類まれなる輝きを放っているようでした。「面白そう」を大事にしながら、きっとまだまだ、色々な分野でご活躍されることと思います。貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

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